エムズレイズへの薬局事業譲渡をされたオーナー経営者インタビュー

ホワイト薬局創業者・元オーナー

エムズレイズへホワイト薬局を事業譲渡

瀧浪　正之

Takinami Masayuki

30年前。浜松で医薬分業第一号の調剤薬局を開局

元はメーカー勤務。その後転職して個人病院でちょうど20年勤めた後、ホワイト薬局を開局した。もともと調剤薬局開局に興味があり「いずれは」と思っていた。保健所に相談したところ「風穴をあけてもらって良い」とのこと。医師会にも話したら「医師会としてはここの関係の問題」と事実上の容認。1日○件と目標を決めてクリニックを回った。TELアポは難しかったことが懐かしい。患者数や立地条件も考慮しドクターに挨拶をしていった。好意的なドクターがいても薬局を建てる土地がなく断念することも。やっとご縁があり薬局を開局することになったが、まだ医薬分業の黎明期。金融機関からの融資も難しかった。お金を借りることがこんなに大変だとは思わなかった。地域の金融機関の借入と退職金でなんとか資金調達を成功させ調剤薬局を開局。浜松では医薬分業第一号の調剤薬局となった。当初患者さんは少なかったが、開局後すぐにインフルエンザが猛威をふるったことなどもあり一気に増えた。3年後、法人化できた。

良い人や縁に恵まれ30年間薬局を続けることができた。

開局直後はまだ医薬分業について理解されていなかった。患者さんから「なぜ医者で治療費を払ったのに、また薬局で払わなければいけないの？」と咎められることも。しかし病院で勤めることと違い、患者さんの為に一生懸命向き合うことが、少しずつ信頼と知名度を得て結果的に自分の為になることにやりがいを感じた。地域に認められ100件を超える医療機関の処方箋を応需する薬局となった。薬剤師の妻も一緒に手伝ってくれて心強かったが、長く薬局経営を続ければいろいろある。一番大変なのは人の問題だろう。良い方を採用できるか。同僚同士の相性が良いか・・・。しかし良い人や縁に恵まれ30年間薬局を続けることができた。

2020年3月、ふと薬局経営から退こうと思った。

現在、薬局の数は昔とは比べられないほどに増え、生き残りは競争だ。先が読めない。それなりに歳をとり厳しい経営環境を乗り越える気力体力に自信がなくなってきた。ふと、2020年3月、薬局経営から退こうと思うようになった。
「うちにやらせてほしい」チェーン店、個人薬局、様々な方からお話をもらった。そんな中でご縁ができたのがエムズレイズの川崎社長。直接お会いしてお話をしてみて、身近に感じた。経営思想が近いと感じた。近くにはエムズレイズの薬局もある。正直、周りの人は「やめておいた方が良い」と言っていた。もっと大きな会社もある、と。もっと高く買ってくれる会社もあるのではないか、と。

売ったら終わりではない、と思う。

しかし、従業員のことがある。みんなには生活がある。大きな会社に薬局を譲渡したら元々いた従業員の待遇が悪くなったり、就業が続けられなくなったりする話をよく耳にする。大手薬局チェーンとも話をしたが、話ができる相手は社長ではなく営業。信頼はできない。患者さんやドクターに対してはもちろん、地域に対する責任もある。売ったら終わりではない、と思う。話し合いの中で、方針を決めた。エムズレイズにホワイト薬局の未来を任せることにした。従業員はみんな残ってくれた。

元気なうちに辞めないと、辞められなくなる。

新型コロナが猛威を振るう。こんな時代になるとは思わなかった。維持するだけでも大変だ。合理的で現代的な経営でないと続かないと思う。川崎社長に任せて良かったと心から思う。本当に先は見えない。自分だったら乗り越えられなかったかもしれない。
歳を取れば何から何までやるのは難しい。「元気なうちに辞めないと、辞められなくなる。」
病院に入ってから辞めるのは無責任かなと思う。元気なうちに、しっかり考えられるうちに責任を持って引き継ぐべきだと思う。本当に甘いことは言っていられない時代だ。

「おお。まだ生きていたか。」

私も薬剤師として働くことができている。薬局を譲渡して肩の荷が下りたけれど、責任がなくなったわけではない。できるかぎり下支えしたい。薬局を譲渡してからも薬剤師として関われるのもエムズレイズだからこそだと思う。患者さんは皆、顔見知りばっかり。「おお。まだ生きていたか。」と言われて、嬉しく思う。